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ビル・ゲイツと原子力発電

ビル・ゲイツが資本参加する原子力発電のベンチャー企業TerraPower社と東芝が技術提携するというニュースが流れた。燃料棒の交換なしに100年間発電を続けることができるという、TWRというTerraPower社の技術を応用するためだということだ。

TWRという技術がどんなものか興味がわいたので調べてみたら、東京工業大学の関根博教授の提唱するCANDLEという燃焼方式と同じものだそうだ。CANDLEについては、関根教授の日本語によるわかりやすい解説『蝋燭に灯を点せ CANDLE 原子炉の新しい燃焼法』が公開されている。

後半は数式が出てきて難しいが、前半の図解と解説を読むだけでも概要がわかる。

原子力発電は核分裂反応を利用してそのときに発生するエネルギーを利用するものだが、核分裂を起こすためにはウランの同位元素のような不安定な原子核に、減速した中性子を取り込ませる必要がある。中性子を取り込んだウランの原子は不安定さが増し、自己崩壊して核分裂を起こして他の元素に変わってしまう。そのときに大きなエネルギーが発生するのでこれを利用することができる。

また、核分裂の際に新たにウランの原子核から中性子が放出される。これが、他のウランの同位元素に吸収されると新たな核分裂が起き、核分裂反応が連鎖的に発生することになる。

この連鎖反応の段階で発生する中性子の数が増加していくと、ねずみ講式に核分裂が増えていき核爆発が起きてしまう。逆に中性子の数が次のウランの同位元素に吸収される前に消滅したり、核分裂しない安定な元素に吸収されたりして減少してしまうと、核分裂反応は止まってしまう。

原子力発電の場合は、中性子が増えも減りもしない状態で核分裂反応を維持しながら、エネルギーを取り出している。この状態を臨界という。従って、核分裂を維持させるために中性子の量を狭い範囲にコントロールするという高度な制御機構が必要となっている。また、制御に失敗して臨界を超えた場合爆発の危険性も抱えることになる。

ところが、CANDOL方式の燃焼法では、核分裂反応を棒状の燃料の一方の端からろうそくを燃やすように徐々に核分裂を行わせるというところが、以前の燃焼法との違いだ。

劣化ウランや天然ウランのように通常では核分裂が連鎖的に起きにくい燃料棒をつくり、その一端で核分裂反応を起こしてやると、その部分の核分裂で発生した中性子が、未燃焼の燃料棒の安定なウランに取り込まれ、プルトニウムを発生する。そうすると、本来は核分裂が起きなかったはずの、未燃焼の燃料棒のうち、現在核分裂反応が発生している部分に接する部分の反応性が増し、新たな核分裂を起こすことができる。

燃料棒の調整をうまくやれば、核分裂が起きやすい部分を現在核分裂がおきている部分に隣接する部分に限定することができるので、核分裂反応は燃料棒に沿って徐々に進んでいくので爆発の危険もない。

燃料棒の燃えかすを残しながら、燃料棒に沿って核分裂の燃焼が進んでいくので、ろうそくというより線香をイメージした方がわかりやすい。

これからも分かるように、CANDLEの燃焼法は一種の増殖炉だが、核燃料の製造が局所にとどまるため爆発の危険がなく、制御が非常に簡素化される。また、燃料の効率が格段に良く、ウランの40%を燃焼させることができるらしい。軽水炉の効率が3%くらいということだから、10倍以上の効率になる。

ものづくりは、材料とエネルギーが必要だが、エネルギーを安全に安価に作ることができれば製造業の根幹を押さえることができる。さすがビル・ゲイツだ。目の付けどころが違う。
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by tnomura9 | 2010-03-25 08:08 | 話のネタ | Comments(0)
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