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労働力の流動化

ベーシックインカムが必要だと思われる産業構造の変化の一つに労働力の流動化がある。

科学技術の発展による生産力の増加のため、昨今は商品の寿命が非常に短くなってしまっている。このため、短期間に大量の需要が発生したと思ったらすぐに需要の飽和が起こってしまう。したがって、企業のほうは短期間に膨大な労働力需要が発生したと思ったら次には労働力の過剰に対応しなくてはならない。正規社員が減少し、派遣労働者が増えていったのはそのためだ。

労働力の流動化は良いことではないが、これも、ベーシックインカムで就業者の生活が基本的に保証されていれば、解雇後の生活の不安のストレスが少なくなり流動的な労働力の確保が少し楽になる。

もう一つは、グローバル化による賃金の低下傾向だ。正規社員を企業がなかなか取らない理由は、給与のほかに健康保険料や、雇用保険などの社会保険料の負担が大きいからだ。工程の自動化などで労働者一人当たりの生産量を高めても、開発途上国で生産したときの賃金より高目になってしまう。ベーシックインカムによって雇用保険の必要がなければ賃金あたりの生産性を高めることができる。

就労するほうも実際に受け取る金額は変わらないのでとくに不満はないはずだ。また、生活の保障はされているので給与の額よりも他の労働条件のほうが気になるかもしれない。ワークシェアリングで給与が下がっても勤務時間が減るほうが都合がいいかもしれない。

また、生活の困窮感がなくなるので、購買意欲が極端に減ることもなくなり、デフレや不況が起こりにくくなる。

賃金が低下するのは、生産力の増強により企業の収益力が増しているにもかかわらず、需要と供給の変動の激しさのために、給与が企業にとって固定費になってしまって、労働者への恩恵がまわらない仕組みになってきているからだ。これは、個々の企業に努力を要求するよりも国全体としての対応が必要になってくる。

つまり収益が上がる時と落ち込むときの変動のサイクルが短く、振幅が大きくなってきている。儲かっているときは法人税を払えるが、儲からなくなると給与の固定費に悩まなければならないという状況になってきているのだ。これも所得の再配分を国で調整することによって企業の運営を助けることができる。

今のシステムでこれらの産業構造の変化に対応できていれば問題ないが、対応できなくなるかもしれないという兆しが表れているのなら、早い段階で対応の選択肢を模索しておく必要がある。政治家の資質として先見性は欠くことができない。

ベーシックインカムはコストがかかりすぎるように思われるかもしれないが、所得の再配分の比率を適切に策定すれば、国内の景気の変動を安定化させ、人件費を節約し、企業の競争力を高め、社会的な安全性を高める可能性がある。

周囲を見渡しても転職や開業を経験した人は多い。終身雇用を理想として考えることは、現実の事情とは異なっているような気がする。労働力の流動化を問題だと考えず、国の産業競争力をつけるために積極的に取り入れる必要があるかもしれない。しかし、その場合はベーシックインカムによるセーフティーネットをしっかりと張っておかなければならない。
by tnomura9 | 2009-11-19 11:54 | 話のネタ | Comments(0)
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