一般企業が融資を受けるのは、融資を受けて支払う利息以上の利潤が期待できるからだ。
100万円の手元資金で120万円の売り上げがあるばあい20万円の利益がでる。この場合100万円の融資を受けて全体で200万円の投資を行った場合、240万円の売り上げとなるので融資分の100万円に10万円の利子を載せて110万円返却したとしても、融資を受けないときより10万円多くの利潤を上げることができる。 さらに、この融資で発生した利子には生産物の価値という実質の生産の裏付けがある。 しかし国の事業の場合は生産は行われない。国の収入はすべて税から発生するからだ。したがって、国が国債を発行して借金をした場合、国債の利子は税収から支払われるため、その分の税の運用ができなくなってしまう。一般企業の場合は融資を受けることによって生産量が増加するが、国の借金の場合は融資を受けると実際に公共事業に使える資金が減ってしまう。 また、国債によって行われた事業から収益があるわけではないので、発生した利子は実体的な生産の裏付けのない幻の資金になってしまう。 もともと税というのは所得の再配分だ。経済活動によってどうしても所得の偏りは発生してしまう。この偏りをなくそうとした共産主義は破綻したので、経済活動を円滑に行うにはこの偏りを全く無くすわけにはいかない。しかし、この偏りをまったく放置した場合、マルクスの予言どおり資本主義は崩壊するだろう。今度のバブルの崩壊もそういう資本主義の矛盾からきていると言える。そこで、資本主義国家では税という形でそれぞれの所得の一部を国で徴収して公共事業やセフティーネットに再配分している。 ところが国債を発行してしまうと、国債の利子は一部の金融機関に流れて行ってしまう。再配分をするための資金が再配分にならず偏ってしまう結果になる。おまけに、利子は複利計算されるので、利率よりはよほど大きな返済が発生してしまうのだ。このことは所得の再配分という税の意義をかなり減らす結果にもなる。 一方、資金の調達を国債ではなく政府保証の貨幣で行うと利子は発生しない。調達した資金はすべて公共の用に使うことができる。この貨幣の価値は国の税収で保障されるので乱発しない限りは極端なインフレも起きない。少なくとも国債の利払いで歳出のかなりの部分がなくなってしまうという事態は避けることができる。 税は所得の再配分であり、所得の再配分は国民の生活を守り国の経済が安定するために必要な措置だ。所得の再配分という税の意味を最大限活用するためには、国債ではなく政府保証の貨幣が必要となる。 単純に考えても経済成長が永遠に続くわけがない。国の台所を経済の成長率に頼らないといけないようでははなはだ心もとない。所得の再配分という税の効果を最大限活用できる仕組みについて考える時がきているようだ。
by tnomura9
| 2009-11-16 13:18
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